大陸を北西に飛び続ける群れ。空は暗くなり、風が強くなりだした…
ピーター「また嵐がきそうですね」
クイック「ああ、しかも今回も隠れられる場所がなさそうだ」
クイックの見つめている大地。そこは何もない大雪原だった。
(映↑)群れをいろんな角度から、背景に暗い空→群れを正面から、風の音を強調
一方、フリー達…
薄暗い空と雪原。辺りには不気味な叫び声のような風の音が響く…
フリー「イヤな予感がするな…」
カレン「何だか怖いわね…」
ロン「嵐がきそうですね」
フリー「ああ…隠れられる所を探さないと…」
(映↑)フリー達を近くから→フリー達を下から→フリー達目線の雪原
数時間後…
群れは猛吹雪に遭っていた。叫びながら吹きすさぶ風、叩き付けるような雪、またも手加減を知らない自然が群れを襲う。
ピーター「りっ、リーダー!ゆっ、雪で目を開けているのも困
難です!」
クイック「わっ、分かっている。あっ、あそこに逃げ込むんだ!」
(映↑)群れを正面から→群れをいろんな角度から→話す2羽
前方には大きな岩場が見えていた。風でフラフラになりながらも群れはそこへ近づいていく。
そして何とか岩場に着き、中央部分へ着地した。周りを巨大な岩山に囲まれているため、ほとんど風は入ってこない。
クイック「ふう…前回よりは早く避難場所が見つかったな」
ピーター「はい、それにここなら夜を明かせそうです」
クイック「フリー達は大丈夫だろうか…」
(映↑)クイック目線で見た岩場→岩場から見た群れ→岩場に降下する群れ
つぶやくクイック。その心配は的中していた。大規模だったため、フリー達も同じ嵐に遭っていたのだ。
強風と横殴りの雪の中を飛ぶ3羽。
フリー「うっ、うわー!羽がもってかれる〜」
カレン「きゃっ、目に雪が〜なっ、何とかならないの!」
ロン「なっ、なりません!退避できる場所がないのですから!」
カレン「そっ、そんな〜」フリー「あっ、まて!あそこ!」
カレン「えっ、何?!」
フリー「ほら!向こう!」
(映↑)3羽を正面から→3羽を適当に切り替えて
フリーの視線の先、闇に沈もうとしている雪原に何かが見える。
カレン「えっ?枯れ木の集まりじゃ…」
直線を組み合わせたような枯れ木。その向こうに黒い半球状の物体が見えた。それは群れが訪れた大樹だった。
(映↑)枯れ木と大樹
ロン「あれだけ枯れていません。」
フリー「でかそうだぞ」
どんどん接近していく。
近づいくにつれ、その巨体が視界を埋めていく。
ロン「すっ、すごい大きさです」
カレン「こんな木があるなんて」
想像したこともないような巨木。その圧倒的な存在感に3羽は吹雪も気にならなくなっていた。
(映↑)3羽を適当に切り替えて→3羽目線で見た大樹
フリー「これで助かるぞ」
カレン「ええ、もうちょっとよ!」
ロン「早く中へ!」
3羽は勢いよく、葉の中へ突入した。風を避けるため、奥へ進んでいく。そして減速し、枝に着地しようとするカレンとロン。
フリー「みんな!無事か?」
後ろを向くフリー。
(映↑)話す3羽→フリーを先頭に降下する3羽→減速し足を下に出すカレンとロン→飛び続けるフリー
カレン「あっ!」
ロン「危ない!」
フリー「えっ?」
バゴッ!!
先に枝にとまっていた鳥にフリーは激突した。
(映↑)カレンとロン→フリーが激突するところをアップで
フリー「イテテ…」
?「まったく…何じゃ?!いきなり突っ込んできよって…」
フリー「あっ、どうもすいません……えっ?!」
カレン「うそっ?!」
ロン「きっ、キケロ殿!!」キケロ「おおー!!やはり来たか!」
フリー「いったいなぜここに?」
キケロ「昨日の今ごろ、ワシはクイック達とここへきたんじゃが、想像以上にきびしくてな、他の年寄りと共に残ることにしたんじゃ」
フリー「そうだったのか」
ロン「おや?群れと我々は2日分の差があったはずですよ?なのに昨日群れが来たということは…」
カレン「差が縮まっているわ!」
フリー「やった!!」
キケロ「群れは年寄りがおるからお前達より遅めじゃし、嵐から逃げるために引き返したこともあるからな…」
ロン「えっ、まさか海上で嵐に遭ったのですか?」
キケロ「うむ、ワシらは嵐、そして海の化け物にも遭い、多くの仲間を失った」
カレン「えっ…」
フリー「そんな…」
動きが止まり、固まる3羽。
(映↑)フリーのアップ→驚く3羽→キケロのアップ→嵐・シャチの回想→カレン→フリー
ロン「そうですか…」
うつむくロン。
キケロ「失った仲間達のことは残念に思う。じゃが、お前達が無事で良かった。新しい時代の一部じゃからな」
カレン「私達が時代の…?」
キケロとフリー達が話しているのを何羽かの鳥が見ていた。それに気付いたロン。
(映↑)うつむくロン→カレンのアップ→周りを見るロン→他の枝の鳥
ロン「そういえば我々はここに無断で入ってきたのですが、いいのでしょうか?」
キケロ「おおー!忘れておった。ここの代表であるユグノ殿に会わせなければ」
ロン「その方がここのリーダーということですか」
カレン「だったら挨拶にいかなきゃ」
フリー「怖くないだろうな…」
不安そうなフリー。
キケロ「なーに、大丈夫じゃ。1夜とはいえ、群れを受け入れてくれたんじゃから。ではいくぞ」
キケロは木の上の方へ飛んでいった。
フリー「よし!いくか!」
カレン「ええ!」
ロン「いきましょう」
3羽はキケロを追い掛けた。
(映↑)話している4羽→飛んでいくキケロを下から→追いかける3羽を下から
木の上部…
ユグノは強風に乗り、葉のすき間から入り込んだ雪が枝に付着する様子を見つめ、悩んでいた。
ユグノ「うーん…思ったより入ってくるな…明日、雪かきしたほうがいいな…」
そこにキケロとフリー達が昇ってきた。
(映↑)ユグノをアップで→入り込み、枝に付着する雪→両方を遠めから
ユグノ「ん?、キケロ殿と…!!もしやその3羽はクイック殿の?!」
キケロ「そうじゃ。昨日きた群れを追っている…」
ビシッと右羽根を上げ
フリー「フリーです!」
両羽根を顔にあて可愛いく…
カレン「カレンよ」
他の2羽に少し戸惑いながら…
ロン「ロンです…」
ビシッと両羽根を広げ胸を張り…
キケロ「キケロじゃ!!」
ロン「あっ…いや…キケロ殿はもう自己紹介しなくても…」
キケロ「おおー!そうじゃった」
ユグノ「とにかく外は吹雪だし、今夜はここで過ごすといい」
3羽「ありがとうござます!」
(映↑)振り返るユグノ→キケロ→フリーのアップ→カレンのアップ→ロンのアップ→キケロのアップ→適当に切り替え
その頃、あの親アザラシは粉雪の舞う暗黒の海を泳いでいた。探している子供たちがシャチの餌食になったことを知らないまま…
アザラシ「ハァ…ハァ…もっ、もうかっ、体が…」
ほとんど休憩せず、泳いでいたため、アザラシの体力は尽きていた。休憩しようと氷に乗ろうとした。しかし小さいため、氷は回転し、また海へ落とされてしまった。他の氷に乗ろうとしても、同じだった。
(映↑)真っ黒な海→アザラシを遠めから→アザラシを近くから→あとは落ち立ちたり、上ったりするアザラシを追わず画面を止めたまま
アザラシ「あっ!くそっ!このっ!翼があれば…」
あきらめず、何度も繰り返す…
だが、どの氷も受け入れてはくれない…
回転する氷…海に落ちたアザラシ。浮かび上がるろうとするが、体は動かず、沈んでいく…遠くなる海面…遠くなる意識…
(映↑)アザラシを近くから→海中に落ちたアザラシを近くから→アザラシ目線の遠ざかる海面
アザラシ「フフ…子供達よ…本当はお前達、もう生きてないんだろ…分かっていたさ…でも引き返せなかった…それが親ってもんだろ…」
アザラシの体は闇に消えていった。
翼があれば…と願ったアザラシ。翼のあるフリー達…一見、全く違う両者だが、共に地球という同じ世界の上にいる。時に激しく、時に薄氷のような脆さを見せる世界…この世界で進む変革は何をもたらすのか…それが何であっても生命は受け入れなければならない…例え、翼があっても世界からは逃れられないのだから。
(映↑)沈んでいくアザラシを上から→闇に消える体
この一連の子供のアザラシが流され、子供と探しに行った親の両方が死んでしまうというエピソードは初めはシロクマのつもりで作りました。科学雑誌で氷に乗ったまま海のど真ん中に流されたシロクマの写真を見たのがきっかけで思いついたことなので。つまりこれは現在、実際に起きていることなのです。
ただ、可愛いアザラシの方が印象深くなるだろうということでアザラシに変更しました。その後、同じような目に合っているアザラシの写真も見ました。
温暖化が進むと極地の氷は小さくなるので、こういう目に合うアザラシやシロクマは増えていきます。また氷が減少すれば両方とも生きていくこと自体、難しくなります。実際にシロクマは絶滅危惧種になっていますし。
その上、極地の氷が減ったことで、周辺では資源開発が行われています。そうして採掘された資源が使われることで温室効果ガスが増え、さらに温暖化が進むという悪循環が始まろうとしています。さらに付近に住むシロクマやアザラシをあざ笑うかのように採られた天然ガスは東京ガスが輸入しています。つまりこのエピソードは今の日本人とも無縁ではありません。
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