降格された惑星
〜冥王星76年の軌跡〜



発見

アメリカの天文学者ローウェルは海王星の軌道が理論と違うことから、外側にある未知の惑星重力が軌道を乱していると予想。その惑星探しを初めましたが、発見できないまま死去しました。しかし、1930年に弟子のトンボ−が未知の惑星を発見。直径は地球並と推定され、太陽系第9惑星となりました。


衛星発見

1978年、アメリカのクリスティーが冥王星の衛星カロンを発見。一方、冥王星本体の推定直径は地球の半分程度とされるようになり、その後2000km台にまで落ちることに。もちろん、この直径では重力も大きくなく、海王星の軌道を乱していたというのは観測データに誤りがあったからでした。


水金〜冥海時代に

1979年、他の8個の惑星に比べ極端に楕円の軌道を持つ冥王星が海王星の軌道の内側に入り込みました。これにより、冥王星は最果ての惑星ではなくなりました。


地球に最接近

1989年9月、冥王星は地球に44.4憶kmまで接近。この時、冥王星は海王星より9000万kmも内側にきていました。


初のEKBO発見

1992年、初のEKBO、1992QB1が発見されました。直径は250km程度、公転範囲は太陽から41〜48天文単位辺り。


小惑星に降格騒動

1999年3月、20年ぶりに冥王星が最果ての惑星に戻ったころ、その地位を巡って大論争が起きました。天文学界では軌道の定まった小惑星に番号を付けていました。中でも、区切りの良い1000、2000、といった小惑星には特別な名前を付ける習慣がありました。当時、その番号が10000になろうとしていました。そこで、国際天文学連合小惑星センターのマーズデン博士が、この非常に区切りの良い番号を冥王星に付けてはどうかと提案しました。これには、冥王星と似た性質の軌道のEKBOが発見され、冥王星は極端に大きいEKBOとみなせるようになっていた(発見者のトンボ−氏も冥王星はエッジワース・カイパーベルトのキングと言ったことがあるらしい)、小天体の自動探索システムによく冥王星が引っ掛かる、といった背景がありました。とはいっても、マーズデン博士本人や議論している研究者には冥王星を惑星から除外する気は全くありませんでした。しかし、マスコミが冥王星が小惑星に降格されるというような報道を始めてしまい、大混乱に。この事態の収拾のため、国際天文学連合は"冥王星が惑星から除外されることはない"と宣言し、マーズデン博士の提案は廃案になりました。


2003 UB313発見

2003年10月31日、アメリカのパロマ天文台でカリフォルニア工科大学のブラウン教授らが、未知の天体を発見しました。発見時はあまりに遠く、大きさなどは分かりませんでした。しかし、観測データを詳しく分析した結果、冥王星より大きいことが分かりました。天体の推定直径は最大で3000km以上、公転周期は557年で、地球から145憶km離れています。NASAは第10惑星発見としましたが、セドナと同じ理由で認定されず…ちなみに、この天体は2006年9月に”エリス”(不和と争いの女神)と名付けられました。


セドナ発見

2003年11月、冥王星の遥か外側に直径1000km〜1600km、近日点が76天文単位で遠日点が約1000天文単位という超楕円軌道を1万年で周る天体が発見される。当時は2003 VB12と呼ばれていましたが、後にセドナと命名されました。一時、セドナは第10惑星発見か!?と騒がれましたが、似たような天体が今後も多数発見されそうなことから惑星にはなりませんでした。


太陽系の惑星が12個に!?

2006年8月16日、同月14日からチェコのプラハで開催されていた国際天文学連合総会に、小惑星のセレス(直径約900km)、冥王星の衛星カロン、EKBOの2003 UB313、を惑星にし、太陽系の惑星数を12に増やす案が提出されました。後に冥王星を惑星から除外し、8個に減らす案も出現。これを機会に惑星の正確な定義を作ることになりました。しかし、新たに2003 UB313のような天体が発見される度、惑星が増えることになる、などの理由で反対者が続出。さらに、惑星の定義の原案中に"自己の重力で球状になっている天体"、というものがありましたが、これに当てはまる天体を他に14個発見していたために2003 UB313の発見者ブラウン教授も反対しました。(一時は、分かりやすくするため、冥王星より大きければ惑星とすべきと言っていました。あと、ブラウン教授は国際天文学連合の会員ではなく、投票権はありません。)


最後の審判

2006年8月24日、国際天文学連合は、(1)太陽の周りを公転している、(2)公転軌道上で圧倒的に大きな直径と質量があり、周囲の天体を散らしている(そうでないなら矮惑星)、(3)自己の重力で球形になっている、というような太陽系の惑星の定義を決議。この定義により冥王星は惑星から除外され、dwarf planet(矮惑星)になりました。冥王星は唯一アメリカが発見した惑星なので、アメリカが降格を阻止しようとしていると言われたため、(上記案中のカロン、2003 UB313もアメリカ人が発見)この決議は科学が政治に勝った瞬間とも言われました。もっとも、冥王星除外に賛成したアメリカ人科学者も多数いたようですが…


小惑星番号付与

2006年9月、元太陽系第9惑星になった冥王星に小惑星番号(134340)が付けられました。惑星降格で7年前の提案が現実のものになりましたが、キリ番にはならず…また、2003 UB313にも小惑星番号(136199)が付きました。



今後は…

この問題は大きく報道されたため、一般市民が太陽系について理解を深める良い機会になりました。今後は教科書や占星術、などをどうするかが問題になってくるでしょう。また、もしかしたら将来冥王星の惑星復帰が議論されるかもしれません。



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