fi

ここには、誕生した生命が知的生物と呼べる段階にまで進化する確率が入ります。その鍵となるのが天体衝突です。恐竜を滅ぼしたのと同じ規模の衝突が頻繁に起きている惑星では生物の進化は上手くいかないでしょう。しかし、恐竜が絶滅したことによって哺乳類が人間に進化する道が開けたように天体衝突は生物が進化するために必要な刺激と考えることもできます。この刺激に負けなかった種だけが子孫を残していく。これが、繰り返されることによって臨機応変に環境変化に適応できる生物だけが進化し続けることになります。そして、この結果、環境変化に適応する最良の手段として知能が生まれ、人間が誕生するに至ったのかもしれません。つまり、天体衝突がゼロであれば、知的生命は誕生しない可能性があります。っというわけで、"fi"には適度な天体衝突が起きる条件が揃う確率を入れることにします。
 まず、天体衝突が多くなり過ぎないためには、生命の誕生した惑星の外側に巨大ガス惑星が形成される必要があります。巨大ガス惑星は重力が強いため、惑星系外部からやって来る小惑星の大部分を引き寄せ、内部へ侵入するのを阻止する働きがあります。太陽系では、木星と土星がオールトの雲やカイパーベルトから飛来する小惑星が地球付近にまで到達するのを阻止しています。しかし、巨大ガス惑星が一つだと天体衝突を阻止する効果が弱いかもしれません。また、"二つ以上あれば何個でもいい"っというわけにもいきません。巨大ガス惑星は二つでなければならないのです。巨大ガス惑星が三つ形成されると、二つの場合に比べて、惑星系の重力バランスが極端に悪くなります。すると、重力が相対的に弱い地球サイズの惑星は、巨大ガス惑星に吸い込まれる、中心の恒星へ突き落とされる、など散々な目に合います。太陽系の元になった原始惑星系円盤には巨大ガス惑星二つ分の材料しかなかったので、地球は今も太陽系に存在していられるわけです。
 こうして絶妙な材料の分量によって、丁度二つの巨大ガス惑星が誕生した太陽系でしたが次なる問題が発生していました。太陽系誕生当時、木星は周りのガスを吸収し、成長していましたが、ガスの一部を取り込みきれず、宇宙空間に放出していました。その反動で木星は地球方面へ移動し始めました。いくら巨大ガス惑星が二つでも、すぐ近くに来られては地球は安定した公転軌道を持てません。しかし、これまた絶妙のタイミングで太陽系の元になった原始惑星系円盤のガスが尽きたため、この問題も回避されました。これで、ようやく、地球は安定した公転軌道を手にしました。そこで、適度な天体衝突が起きて、しかも、惑星系の重力バランスが安定する確率を"fi"に入れることにします。前者はその惑星に居なければ分らないので、後者の確率について考えてみます。現在までに見つかった太陽系外の惑星は、ホット・ジュピターか、異常な楕円軌道を持つ惑星で、地球のような惑星は見つかりそうにありません。そこで、まったくの勘で惑星系の重力バランスが安定する確率を1%にします。よって、fi=0.01。

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